サポーティブリスニング ベーシックコースの1限目をノーカットでご覧いただけます(55分51秒)

 

Ⅰ.はじめに

ⅰ)研修の目的

本研修の目的は、聞く力を強化することで、受講者の皆さんの対話力を向上させることです。( 対話力とは、「会話によって合意を形成する能力」のことを言います )

 

 世の中は、合意の形成によって動いています。ビジネスは、企業と顧客、上司と部下、部署と部署の間で、合意が形成されることによって動いています。ですから、すべてのビジネスパーソンにとって対話力が必要だと言えます。

 

 対話力というと、つい「話す力を強化しよう」と考えがちです。しかし、対話には「話す」「聞く」という二つの要素があります。そして、多くの人は「話すこと」ばかり考えていて、「聞くこと」をおろそかにしているため、「話す⇔聞く」のバランスが崩れてしまっています。そのため、「話す力」よりも「聞く力」を伸ばすほうが、簡単だしメリットも大きいのです。(「のびしろ」が大きい)

 

 本研修で学ぶ聞き方を実践すると、「相手の良き理解者」になることができます。ビジネスで、顧客や部下、上司の良き理解者になる。プライベートで、家族や友人などの良き理解者になる。そうすると、相手にとって皆さんの存在感が高まり、言うことに聞く耳をもつようになります。その結果、対話力(会話による合意形成能力)を向上させることができるのです。

 

②人を動かすポイントは、2つあります。それは、「相手に対して優位性をもつこと」「相手の良き理解者になること」です。

 

 優位性をもつというのは、「地位、資金力、知識、情報力、専門性、技術力」などで優位に立つことです。その上で、説得力・提案力・指導力を発揮して相手を動かしていくのが、これまでのビジネスでよく見られた方法でした。

 

 しかし、現代は優位性を保つのが難しい時代です。ネットやシステムの発達によって、知識や情報力、専門性の優位は崩れつつあります。地位の優位性を一方的に使うと、ハラスメントと受け止められる危険性があります。また、世の中の急激な変化(価値観の多様化、少子高齢化、グローバル化、技術革新など)も、安定した優位性を保つことが難しい要因となっています。

 

 そのため、これからの時代は 「相手の良き理解者になり、対話力を発揮することで人を動かす」 というミュニケーションスタイルが、より重要となるわけです。ベテランの方は、ぜひ認識を新たにされ、しっかりと学ばれて、ご自身のビジネスに大いにご活用ください。また、若い方の場合は、まだ相手に対して優位性をもつのが難しいと思います。そのため、「相手の良き理解者になることで自分の存在感を高め、こちらの言うことに聞く耳をもってもらう」というスタイルは若い方にとって非常に有効な手段となります。ぜひ、しっかりと学んでください。

 

 では、相手の良き理解者になるためには、どうすればよいのでしょうか。それには、★相手の伝えたいことを「汲み取る」  ★自分が聞きたいことを「掘り下げる」 という2つの聞き方をマスターする必要があります。この2つを可能にするのが、本研修で学ぶ「サポーティブリスニング」です。

 

 

ⅱ)研修の位置づけ

①対話には4つの要素があり、「どう聞く?」のところに大きな穴があります。

   本研修は、この大きな穴を埋めるものだと考えてください。

 

   たとえば、営業活動のことを考えてみると・・・

   ・何を話す? :(例) 会社案内・商品案内などの資料を作成する

   ・どう話す? :(例) ロールプレイ・プレゼンなどの練習を行う

   ・何を聞く? :(例) 質問票・チェックシートなどを作成する

   ・どう聞く? :??  何もしていない・できない(大きな穴がある)

 

②「聞く力」を活用して、相手を無理なく動かせるようになりましょう。 

ただ傾聴するだけでなく、「汲み取る」「掘り下げる」ことによって、相手のことを良く理解してあげると、相手もこちらの言うことに聞く耳をもってくれるようになります。

 

柔道では、技をかける前に「くずし」を行います。「くずし」とは、相手の重心をわずかにずらすことです。重心がずれたところに、すかさず技をかけることによって、大きな力を使わなくても相手を倒すことができます。逆に言うと、よほど両者の腕力に違いがない限り「くずし」をせずに倒すことはできません。そのため、柔道の試合では、ほとんどの時間が「技をかけること」ではなく、「相手の体をくずすこと」に費やされています。

 

同様に、ビジネスで人を動かそうとする際に、「相手を理解しないまま、説得や提案ばかりに力を入れる」というのは、腕力だけで相手を倒そうとしているようなもので、無理があります。相手を無理なく動かすためには、もっと「相手の体をくずすこと 相手を理解すること」に注力する必要があります。

③あらためて、自分自身のことをふり返ってみましょう。「話すこと」ばかり考えていて、「聞くこと」をおろそかにしていませんでしたか?「どう聞く?」のところに、大きな穴があいていませんか?

●「自分のことを理解してもらう 相手のことを理解してあげる」という状態になっている。

●相手が話している時、自分が次に話すことをあれこれ考えてしまっている。

●会話は、「キャッチボール(球の受け取り合い)」といわれるが、どちらかというと、「球を受け取る」ことよりも「球を投げる」ことに力が入ってしまっている。時には、力が入りすぎて「球を投げつける」感じになっている(ドッジボール・雪合戦)。このような場合、相手は球を受け取るよりも球から逃げようとしてしまう。

●カラオケに例えると、さらにわかりやすい。

・自分が歌うことばかり考えていて、他の人の歌を聞こうとしていない。

・他の人が歌おうとした曲を、マイクを横取りして歌ってしまう。

話には、「イントロ」と「サビ」がある。

顧客や部下の話の「サビ」を聞かず、「イントロ」だけを聞いて判断していませんか?だからこそ、サビまできちんと聞こうとする  (⇒ 意識をする)と共に、サビまでスムーズに聞いていける (⇒ 技術を学ぶ)必要があります。そして、カラオケでも、イントロよりもサビのほうが聞いていて楽しいように、サビまでスムーズに聞けるようになると、話を聞くのが楽しくなります。

 

Ⅱ.全体像の理解

ⅰ)「サポーティブリスニング」とは何か?

 「サポーティブリスニング」とは、相手が話しやすいようにサポートしながら、やさしく話を聞いていく行為のことです。

 

 「相手の良き理解者になろう! 汲み取る・掘り下げるを実践しよう!」と意識して、いざ相手から話を聞こうとしても、なかなか期待通りの答えは返ってこないものです。

 

 実際に、このようなやり取りをした経験はありませんか?

・これについて、どう思う? ⇒ えっ、どう思う?って言われても・・・。

(意見が聞きたい)            (戸惑いが返ってくる)
・どうして、こうなったの? ⇒ いや、僕は何もしていませんよ・・・。

(原因が知りたい)            (言い訳が返ってくる)
・その後、どうでしょうか? ⇒ うーん。まあ、いいんじゃないの・・・。

(状況が知りたい)          (曖昧な答えが返ってくる)
御社の課題は、何ですか? ⇒ なんでアンタに言わなきゃいけないの?

(課題が知りたい)             (反発が返ってくる)
・夕ご飯は、何が食べたい? ⇒ そうだねえ。えーっと、何でもいいよ。

(要望が知りたい)            (なんだかわからない)
・今日は、どうだったかな? ⇒ うーん、まあ、別に・・・。

(感想が聞きたい)              (なんだそれは!)

 

 


 相手は、こちらの質問に答えようとして、あらかじめ準備しているとは限りません。
言わば、「準備不足の状態」にあります。心の準備ができていない、内容がまとまっていないなど、いろいろな準備不足があります。そのため、話を聞く時には、そうしたことをわきまえて、その準備不足を補ってあげるように、やさしくサポートしながら聞いていく必要があります。


 ところが、多くの人は、この必要性を認識しておらず、スキルも磨いていません。そこで、誰でも学べるように、その概念から具体的なノウハウまで体系的に整理して、「サポーティブリスニングSupportive Listening」と名付けたのが本研修です。


 
当初は、経営者、上級管理職などを対象にした内容でしたが、「もっと若いうちに、こうした概念を学びたかった」「組織の共通概念にしたい」という声が多かったため、若手からベテランまで無理なく学べるように工夫して、現在の形になりました。

 
 この研修を開発した時から、ずっと使っている例題に、
・娘が突然、「ある人と結婚したい」と言い出した。そこで、「相手はどんな人?」と聞いてみたが、「そうねえ、うーん、いい人よ」という曖昧な答えが返ってきた。もっと詳しく聞くためには、どうすればよいか?というものがあります。

 皆さんなら、このような時どうしますか?前半の講義が終わる頃には、どうすればよいのか、わかるようになります。

 

 

ⅱ)汲み取るのが先、掘り下げるのは後

話を聞き進めていく方向は、大きく分けて2つある
 A表現の難易度が高い方向:モヤモヤしている。「う~ん、どう言ったらいいのかなあ…」

この方向に聞き進めるためには、うまく表現できるようにサポートすることが必要。これは、サポートするスキルを学んで経験を積めば、誰でもうまくできるようになる。⇒習得することが可能!これが本研修で学ぶことです。

 

Bストレスレベルが高い方向:話したくない。「できればオープンにしたくないなあ…」

この方向に聞き進めるためには、「本当のことを聞かせてよ」と踏み込むことが必要。これは、両者の「キャラクター」や「相性」などによって、結果が大きく異なる。⇒キャラや相性は人による。研修で習得するのは難しい。

  


 サポーティブに聞いていくと、相手は「話のわかる人だ!」と感じてくれるため、
結果的に「話したくないこと」についても話してくれる可能性が高くなります。すなわち、「 汲み取る ⇒ 踏み込む ⇒ 掘り下げる 」というプロセスで聞いていくことが、「相手の良き理解者になる聞き方」のセオリーであると言えます。

 

ⅲ)サポーティブリスニングの全体像

①サポーティブリスニングの構成要素

●答を聞く⇒

  ・質問して、回答を得る。一問一答の状態。

 

話を聞く

  ・質問と傾聴をバランスよく組み合わせる。

 

詳しい話を聞く

・目的意識をもって、能動的・主導的に話を聞く。

  

 ●深い話を聞く立体

・相手の立場になって親身に話を聞く。

・考えを深めるための題材を提供する。

 

 

②自分が話を聞いている時の姿を思い浮かべてみましょう。「質問と傾聴のバランス」は、とれているでしょうか?